NAVERまとめはなぜ終了?23億PVの功罪

しみじみIT回顧録
NAVERまとめはなぜ終了?23億PVの功罪を3行で要約
  • NAVERまとめは、誰でも記事をまとめられる場として2009年に始まり、2020年9月30日に終了したキュレーションサービスだ。
  • 最盛期の2014年6月期には月間約23億ページビュー、まとめ記事は約150万本に達していた。
  • 功績と敗因、そしていま同じ道をたどりかねない構造を、出典付きで整理する。

検索窓に言葉を入れると、上から3つくらいが同じ体裁のまとめ記事で埋まっていた時期があります。画像とリンクと短い一文が縦に並び、下までスクロールすれば何となく全体像がつかめる、あの独特のページです。

NAVERまとめは、その体裁を日本のインターネットに定着させたサービスでした。私が最初に注目したのは、まとめる行為そのものに広告収益が配分されるという設計です。読む人の課題を解くだけでなく、書く人の動機まで一緒に設計していた点が、当時としては珍しい構造でした。

2020年9月30日、そのサービスは静かに幕を下ろします。ここでは公式発表と報道を切り分けながら、NAVERまとめが何を解決し、どこでつまずいたのかを追いかけます。

NAVERまとめの全盛期から2020年のサービス終了までを描いた4コマ漫画。まとめ文化の功績と敗因を振り返る内容。
①通勤電車でまとめ記事に夢中になる会社員。②検索結果に似た記事が並び首をかしげる読者。③終了のお知らせを見て言葉を失う作成者。④デプロイ太郎が集客を自前で持つ大切さを語る。

この4コマは、キュレーションメディアという業態がたどった典型的な曲線を圧縮したものです。最初に起きるのは、散らばった情報が1ページに集まったことによる読む側の時間短縮でした。スマートフォンの画面は小さく、複数のサイトを行き来する負担が大きかったため、縦にスクロールするだけで済む形式は強く支持されます。

次に訪れたのが、②で描いた同質化です。まとめの数が増えるほど、検索結果には似た構成のページが並びます。ここで効いてくるのが、集客を検索エンジンに預けている構造でした。プラットフォーム側の評価基準が変われば、積み上げた記事の流入は一斉に揺れる。他人の土地の上に建てた家は、地主の方針転換に弱いという単純な構図です。

③の終了通知は、書き手にとって作品と収入の同時消失を意味しました。④でデプロイ太郎が触れているのは、いま生成AIに要約を任せる側にも回ってきうる論点です。集めて並べ直す仕事の価値が消えるわけではありませんが、流入経路を一箇所に依存した瞬間、事業の寿命は自分の手を離れます。

NAVERまとめの基本情報

NAVERまとめは、ユーザーがWeb上の情報を引用・整理して1本の記事として公開できるキュレーションサービスです。運営はLINE株式会社およびそのグループ会社が担っていました。

項目内容
正式名称NAVERまとめ
提供・運営元LINE株式会社およびそのグループ会社
サービス開始年2009年
サービス終了日2020年9月30日(終了発表は2020年7月1日)
最盛期の規模2014年6月期に月間約23億ページビュー、まとめ記事約150万本、ユニークユーザー約6,700万
公式発表された終了理由「サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果」
終了後のスケジュールも公式に告知されており、2020年7月31日に新規アカウント登録を停止、2020年11月30日にまとめ記事のダウンロード機能を終了、2021年2月16日に支払い申請機能を終了しています。

NAVERまとめの歩み:誕生から終了まで

NAVERまとめ 11年の軌跡
  • 2009年
    サービス開始
    誰でもWeb上の情報を集めて1本の記事にできる場として登場。まとめるという行為そのものをサービスにした点が新しかった。
  • 2010年
    インセンティブプログラム開始
    2010年11月、まとめ作成者に広告収益を還元する仕組みがスタート。書き手に報酬という動機が加わった転機。
  • 2012年
    本格事業化と固定レート制
    2012年2月、日々の広告収益に左右されない固定レート制と、優良な作成者向けの奨励金制度を導入。前年12月末時点で月間1億9,400万ページビュー、訪問者1,300万人。
  • 2014年
    最盛期
    2014年6月期に月間約23億ページビュー、まとめ記事約150万本。作成者へのインセンティブ総額は4億円を突破した。
  • 2016年
    著作権侵害対策の公表
    同年秋、キュレーションメディア全体で記事の品質と無断転載が問題化。12月28日、LINEが権利侵害の申告時に先に非表示とする対応などの対策を公表した。
  • 2017年
    日本語検索の評価方法が変わる
    2月3日、Googleが日本語検索の品質向上を目的としたアルゴリズムの改善を公式ブログで発表。独自性の高い有用な情報を上位に表示する方向が示された。
  • 2020年
    終了発表とサービス終了
    7月1日に終了を発表し、9月30日にサービス終了。培ったノウハウは検索事業に活かすと公式に説明された。

誕生から5年で月間23億ページビューまで駆け上がり、その後の6年で静かに役目を終える。11年の歩みは、日本のWebメディアが量を追った時期と、質を問われた時期の両方をそのまま映しています。

なぜNAVERまとめはこれほど読まれたのか?

NAVERまとめが読まれた最大の理由は、検索して何ページも開き直す手間を、誰かが1ページに肩代わりしてくれたからです。知りたいことが掲示板・ブログ・ニュース・画像投稿に散らばっていた時代に、それを縦一列へ並べ直す価値は小さくありませんでした。

スマートフォンとの相性の良さも見逃せません。小さな画面でタブを行き来する操作は負担が大きく、上から下へスクロールするだけで概要をつかめる形式は、通勤中や休憩中の数分にぴったり収まりました。ユーザーの課題は情報が足りないことではなく、情報が散らばっていることだったわけです。

もう一つ効いていたのが、検索結果での見つかりやすさでした。まとめ記事は見出しと箇条書きが多く、探している人が実際に使う言葉をそのまま含みやすい構造です。丁寧に整理されたページも、露出だけを狙ったページも、同じ形式に乗って一覧に並びます。この見つかりやすさが読者を呼び、読者の多さがさらに作成者を呼ぶ循環につながりました。

書き手の動機まで設計されていた

もう一方の柱が、まとめを作る側への還元でした。2010年11月に広告収益を還元するインセンティブプログラムが始まり、2012年2月には日々の収益変動に左右されない固定レート制と奨励金制度が導入されています。読み手を増やすだけでなく、書き手が続けられる理由を用意したことが、記事数の伸びに直結しました。

数字の伸びは急でした。2011年12月末時点で月間1億9,400万ページビュー・訪問者1,300万人だったものが、2014年6月期には月間約23億ページビュー、まとめ記事約150万本、ユニークユーザー約6,700万に達します。作成者へのインセンティブ総額が4億円を超えたことも当時報じられており、個人が書いて稼ぐという発想を広く知らしめました。

ITKAGYO運営者デプロイ太郎のアイコン画像
デプロイ太郎

私はこのサービスを、記事を配る仕組みではなく、編集という作業を細かく分けて外に出した仕組みだと見ています。素材を集める人、見出しを付ける人、並べ替える人が全部同じ一人でよかった。道具としての手軽さが、そのまま量を生みました。

NAVERまとめはなぜ終了したのか?

NAVERまとめの終了理由として公式に示されたのは、市場環境の変化とグループ全体の選択と集中です。2020年7月1日の公式ブログでは、「サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果」と説明されました。

報道ベースの情報も並べておきます。Business Insider Japanの取材に対し、LINE広報はキュレーションメディアの著作権問題、プラットフォームとしての誹謗中傷への責任、新型コロナウイルス感染症の拡大による広告費の下落のいずれも直接的な原因ではないとしつつ、伸びていたサービスではなかったと語ったと報じられています。同じ記事では、Zホールディングスとの統合とは関係がないという広報コメントも紹介されました。

背景にあった業界全体の揺れ

時系列を並べると、2016年秋以降のキュレーションメディアをめぐる動きが目に入ります。DeNAは2016年11月29日、運営する医療情報サイトの全記事を非公開にしたと発表しました。この流れの中で、LINEは12月28日にNAVERまとめの著作権侵害対策を公表し、権利侵害の申告があった時点で先に非表示とする運用などを説明しています。

この対策について、LINEは権利を侵害する可能性のある内容を速やかに非表示にする方針を示す一方、プロバイダーとしての立場は変えないと説明したと報じられています。投稿の中身を事前に審査するのではなく、申告を受けてから対処するという整理でした。投稿型サービスの責任範囲をどこに引くのかという問いは、いまのユーザー投稿型プラットフォームでも形を変えて続いています。

検索側の変化も重なります。Googleは2017年2月3日、日本語検索の品質向上を目的としたアルゴリズムの改善を公式ブログで発表し、独自性のある有用な情報を上位に表示する方向を示しました。同年12月には医療・健康分野の検索結果を改善する更新も告知されています。集客の大半を検索から得ていたメディアにとって、評価基準の変更は経営環境の変更とほぼ同義です。

規模の推移も記録に残っています。2014年6月期の月間約23億ページビューに対し、2019年8月末時点の月次利用ブラウザー数は約4,800万と報じられました。指標が異なるため単純比較はできませんが、少なくとも右肩上がりの局面ではなくなっていたことは読み取れます。

ここからは私の見立て

ここからは事実ではなく、あくまで外から見ていた私の見立てです。公式にはサービス環境と市場環境の変化と説明されていますが、私は集客の習慣を自前で持てなかったことが根にあったと考えています。NAVERまとめを毎朝開く習慣を持つ人より、検索から流れ着いて読み終えたら離れる人のほうが多かったのではないか、という見方です。

習慣が検索エンジン側にある限り、評価基準が変わればアクセスは一斉に動きます。サービスは機能で選ばれ、習慣で生き残る、というのが私の持論です。1ページで済むという機能は確かに優れていましたが、そこへ戻ってくる理由が弱ければ、外部要因の影響をそのまま受けてしまいます。

加えて、まとめという形式そのものが持つ寿命についても考えています。2010年代前半は情報が散らばっていたからこそ、集めて束ねる作業に価値がありました。ところが、SNSのタイムラインが話題を時系列で流し、企業や自治体の公式アカウントが一次情報を直接発信するようになると、間に立つ役割の相対的な重みは下がります。解決していた課題のほうが先に小さくなったというのが、私の読みです。

もう一点、ページビュー連動の報酬設計についても触れておきます。書き手の参加を増やした立役者である一方、量を増やすほど有利という力学も同時に働きました。品質を担保する仕組みのコストは後から積み上がるため、初期の伸びの速さと後年の運用負荷は表裏だったのではないか、と私は見ています。これは公開情報の時系列から逆算した推測であり、社内の判断過程を知って述べているものではありません。

教訓は単純です。流入の入口を1つの外部プラットフォームに預けているなら、その基準変更は自社の売上変更と同じ重さで扱う必要があります。
ITKAGYO運営者デプロイ太郎のアイコン画像
デプロイ太郎

結果だけを見て当時の判断を断罪する気はありません。2010年代前半の環境では、書き手に還元して量を伸ばす設計は十分に合理的でした。合理的な判断が、環境の変化で不利に働くことがある。そこが難しいところです。

NAVERまとめが残したものは何か?今なら何を使うべきか?

NAVERまとめが残した最大の遺産は、専門家でなくても情報を編集して公開できるという実感と、その裏側にある引用と権利の線引きを社会全体で考える契機です。まとめるという行為に値段が付くことを可視化した点も含め、日本のWebメディアの前提を書き換えました。

引用の範囲や出典表示の扱いといった論点が広く共有されるきっかけにもなりました。権利者からの申告時に先に非表示とする運用は、投稿型プラットフォームの責任分担を考えるうえで参照されやすい事例といえます。功績と課題は、どちらか一方だけを切り出しても正確になりません。

用途別に見る、いまの選択肢

当時の使われ方いまの代替注意点
話題のSNS投稿を集めて流れを追うソーシャル投稿のまとめサービス引用元の表示と権利者の意向を確認する
商品や店を横並びで比較する各メーカー・店舗の公式サイト、専門メディア更新日と価格の出典を必ず見る
調べ物のとっかかりを作る検索エンジンと生成AIの要約要約の元になった出典まで自分でたどる
個人が書いて収益を得る自前のブログ、投稿型メディア、動画流入経路を複数持ち、1つに依存しない

NAVERまとめの教訓は今のAI時代に何を示すのか?

NAVERまとめの経験がいま重なるのは、生成AIによる要約と再編集の領域です。集めて並べ直す作業のコストが限りなく下がった結果、2010年代前半と同じく、量が一気に増える局面に入っています。

ここで思い出したいのが、終了告知の締めくくりです。公式ブログでは、NAVERまとめが培ってきたノウハウを2019年に発表された検索事業の発展に活かすとも説明されました。サービスの看板は下ろしても、情報を集めて整理する技術と運用の知見は組織に残り、別の形で使われるという整理になります。撤退を単なる撤収としてだけ読むと、この部分を見落とします。

この事例の教訓と今のトレンドを掛け合わせると、次に起きそうなことは1つに絞れます。要約コンテンツの評価基準が、プラットフォーム側の都合で再び切り替わるという展開です。新しい技術は過去のサービスの敗因を一度なぞりますが、歴史を知っている側は先に手を打てます。出典を自分でたどる習慣、複数の流入経路、そして戻ってきてもらう理由。この3つを用意できるなら、同じ轍は避けられるはずです。

最後に問いを1つ残します。いまあなたの仕事や生活を支えているサービスは、どこから人を集めているでしょうか。その入口が他社の判断ひとつで変わるとしたら、明日から何を用意しておきますか。

  • NAVERまとめは2009年に始まり、2014年6月期に月間約23億ページビューまで伸びたキュレーションサービスだった。
  • 公式の終了理由は市場環境の変化とグループ全体での選択と集中で、2020年9月30日に幕を閉じた。
  • 残った教訓は、集客の習慣を自前で持つことと、出典に自分でたどり着く力を保つことに尽きる。

この記事で使用された用語

用語概要
キュレーション既存の情報を集めて選び、文脈を付けて並べ直す編集手法のこと。
コタツ記事現場に足を運ばず、ネットやテレビで拾った二次情報だけを再構成して書かれた記事。コタツに入ったまま書けることが名前の由来。
一次情報自分が直接体験したり、調査や実験をして手に入れた自分だけの生データのこと。
検索エンジン調べたい言葉を入れると、世界中のWebページから関連するものを探し出して一覧で示してくれる仕組み。
SEOスパム検索エンジンのガイドラインに違反して、不正な手段で検索順位を操作しようとする行為。

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よくある質問

Q
NAVERまとめの記事は今も読めますか?
A

読めません。2020年9月30日のサービス終了後、まとめ記事のダウンロード機能が期間限定で提供され、2020年11月30日にその提供も終了しました。支払い申請機能は2021年2月16日までとされています。

Q
終了の原因は著作権問題だったのですか?
A

公式発表では著作権問題は理由として挙げられていません。公式ブログはサービス環境・市場環境の変化と、グループ全体での選択と集中を理由としています。報道では、LINE広報が著作権問題を含むいくつかの要因についていずれも直接的な原因ではないと述べたと伝えられています。

Q
ヤフーとの経営統合が影響したのでしょうか?
A

関係はないと説明されています。Business Insider Japanの記事では、LINE広報がZホールディングスとの統合とは特に関係がないとコメントしたと報じられました。公式ブログにも統合に関する記述はありません。

Q
どのくらいの規模のサービスだったのですか?
A

最盛期は月間23億ページビュー規模でした。2014年6月期に約23億ページビュー、まとめ記事約150万本、ユニークユーザー約6,700万と報じられています。2019年8月末時点の月次利用ブラウザー数は約4,800万でした。

Q
いまキュレーションの代わりになるものは何ですか?
A

用途ごとに分けて選ぶのが現実的です。話題の流れを追うならソーシャル投稿のまとめサービス、比較検討なら公式サイトや専門メディア、下調べなら検索エンジンと生成AIの要約が近い役割を担います。どの手段を選ぶ場合でも、要約の元になった出典を自分で確認する手間は残しておきたいところです。

出典・参考リンク

  • NAVERまとめ公式ブログ「NAVERまとめ サービス終了のお知らせ」(2020年7月1日) https://navermatome-official.blog.jp/archives/83259956.html
  • KAI-YOU「NAVERまとめ、9月30日でサービス終了」(2020年7月1日) https://kai-you.net/article/76016
  • Business Insider Japan「NAVERまとめが9月30日でサービス終了、終了理由はヤフー統合は関係なしと広報コメント」(2020年) https://www.businessinsider.jp/article/215744/
  • MarkeZine「NAVERまとめ作成者へのインセンティブ総額4億円突破 月間23億PVのキュレーションプラットフォームへ成長」(2014年7月29日) https://markezine.jp/article/detail/20602
  • MarkeZine「ネイバー、NAVER まとめを本格事業化 まとめ作者のインセンティブに固定レート制を導入」(2012年2月6日) https://markezine.jp/article/detail/15137
  • 日経クロステック「LINEがNAVERまとめの著作権侵害対策を公表、プロバイダーとの立場は変えず」(2016年12月29日) https://xtech.nikkei.com/it/atcl/news/16/122903862/
  • 株式会社ディー・エヌ・エー「当社運営のキュレーションプラットフォームについてのお知らせ」(2016年11月29日) https://dena.com/jp/news/003255/
  • Google 検索セントラル ブログ「日本語検索の品質向上にむけて」(2017年2月3日) https://developers.google.com/search/blog/2017/02/for-better-japanese-search-quality
  • Google 検索セントラル ブログ「医療や健康に関連する検索結果の改善について」(2017年12月6日) https://developers.google.com/search/blog/2017/12/for-more-reliable-health-search

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